DX研修は、職務や訓練内容などの要件を満たせば、人材開発支援助成金の対象になり得ます。事業展開等リスキリング支援コースのDX化・GX化の訓練では、令和8年8月3日改正により、職務に間接的に必要な内容や共通のリテラシーにとどまる訓練は対象外です。講座名だけで判断せず、誰のどの業務に必要な技能を学ぶかを確認します。
DX研修の助成金要件は?10時間以上・OFF-JT・職務関連
事業展開等リスキリング支援コースには、事業展開、DX化・GX化、今後従事する職務に関する訓練の類型があります。本記事で扱うのは、企業内のデジタル化やDX化、脱炭素に向けたGX化を進める「ⅱ」の類型です。
| 確認項目 | 要件 |
|---|---|
| 事業主・労働者 | 雇用保険適用事業所の事業主と、雇用保険被保険者である労働者 |
| 訓練時間数 | 10時間以上 |
| 実施方法 | OFF-JT。企業の事業活動と区別して行う訓練 |
| 職務との関係 | DX化・GX化に関連する業務に従事させる上で必要な、専門的知識・技能を習得させる訓練 |
| 提出する計画 | 事業展開等実施計画を、職業訓練実施計画届と併せて提出 |
職業訓練実施計画届は、実施する研修を事前に届け出る書類です。事業展開等実施計画には、自社で進める取組の内容を具体的に記載します。時間数を満たすだけでなく、取組と受講者の職務、学ぶ内容のつながりが必要です。
令和8年8月3日改正で対象外になるDX研修とは
令和8年8月3日の改正は、事業展開等リスキリング支援コースのDX化・GX化に関する訓練の対象範囲を変更しました。職業・職務に間接的に必要な知識や、職種を問わず共通して必要な内容は対象外です。
リテラシーとは、技術などを理解し使うための基礎的な知識を指します。共通のリテラシーや概念理解にとどまらず、特定の職務の具体的な業務へ適用する内容かを確認します。厚生労働省の改正資料にある例は、次のとおりです。
| 区分 | 訓練内容・受講者 | 判断のポイント |
|---|---|---|
| 対象例 | 営業担当者が生成AIで商品提案書の構成案作成・文章生成・修正方法を学ぶ | 営業の具体的業務に直結する |
| 対象外例 | 生成AIを利用するための汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ | 特定業務への具体的適用を伴わない |
| 対象外例 | DXの概念、デジタル技術の概要、データ活用の考え方を学ぶ | 共通知識の習得にとどまる |
| 対象外例 | 脱炭素の基本理念、国際情勢、GX化を進める上で企業に求められる対応を学ぶ | 具体的作業として業務へ直接適用されない |
| 対象例 | CO2排出量算定業務の担当者が、使用量データの収集方法や算定ルールに基づく計算手順を学ぶ | 担当業務に直接組み込まれる実務能力を学ぶ |
| 対象外例 | 同じCO2排出量算定の訓練を、人事や営業の従事者が受ける | 受講者の職務に対応していない |
プロンプトは、生成AIに入力する指示文です。その作り方を扱う研修でも、汎用的な説明で終わるのか、営業担当者の商品提案書作成まで扱うのかで、資料の例は分かれています。上表は訓練内容の例であり、個別の受給を保証するものではありません。
DX研修を職務に直結させるカリキュラムのチェック項目
事業展開等リスキリング支援コースのDX化・GX化訓練では、受講者と内容を一緒に検討します。以下は改正資料の注意点を、研修を依頼する際の確認項目に整理したものです。新たな法定要件を示すものではありません。
- 受講者の職務を特定しているか。「全社員向け」だけでなく、実際に担当する業務を確認します。
- 研修で扱う作業を具体化しているか。「AIを理解する」だけでなく、商品提案書の構成案作成などを記載します。
- 知識の説明だけで終わらないか。カリキュラムで、担当業務への適用方法を学ぶ部分を確認します。
- 受講者の選定理由を説明できるか。同じ内容でも、直接その業務を担当する人かを確かめます。
- 自社のDX化の取組と学習内容が対応しているか。事業展開等実施計画とカリキュラムを照合します。
対象外とされた内容に職種名を付けるだけでは、具体的な業務への適用を説明できません。講座名、受講者、学習内容のそれぞれを照合し、担当業務で何を行うための研修かを整理します。
改正前に申し込んだDX研修の経過措置は
対象外の訓練例に関する経過措置では、事業外訓練は教育訓練機関との契約締結日や申込日を確認します。事業内訓練では、対象経費に係る契約・申込・発注等の日付が分かる書類を、計画届とともに提出します。
定額制サービスには、この経過措置の適用に追加の条件や除外があります。契約日だけで従前の扱いになると判断せず、契約内容と訓練の実施期間を示して確認します。
人への投資促進コースとDX研修の助成金の違い
人への投資促進コースには、高度なデジタル人材などを育成する訓練メニューがあります。企業内のDX化に必要な業務を学ぶ訓練と、高度人材の育成を目的とする訓練を区別して検討します。
| コース・メニュー | 概要資料が示す訓練 |
|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース・ⅱ DX化・GX化 | 企業内のDX化等に関連する業務に必要な、専門的知識・技能を習得する訓練 |
| 人への投資促進コース・高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練 | ITスキル標準・DX推進スキル標準のレベル3・4となる訓練等、大学・大学院での訓練(資料の表) |
ITスキル標準などは、必要な技能の水準を示す基準です。「DX」と付く講座すべてが高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練に当てはまるわけではありません。一般的な社内研修を指す名称ではなく、スキル標準の水準や、大学・大学院での訓練として確認が必要です。
DX研修を頼む前に確認する資料と申請時期
事業展開等リスキリング支援コースを検討する場合、依頼前にカリキュラムと自社の計画を照らし合わせます。見積りだけでは、受講者の職務や研修内容との対応を確認できません。
- カリキュラム:対象とする職務、学ぶ知識・技能、時間数、実施方法を確認します。
- 事業展開等実施計画・対象労働者一覧:自社の取組と受講者の担当業務との関係を確認します。
- 見積り・契約書・申込書:費用の内訳と契約・申込の日付を確認します。
- 最新の支給要領・パンフレット:適用される要件、経過措置、必要書類を確認します。
| 手続き | 時期 |
|---|---|
| 計画届などの提出 | 訓練開始日の6か月前から1か月前まで |
| 支給申請 | 訓練終了日の翌日から2か月以内 |
事業展開等リスキリング支援コースでは、支給申請までに訓練経費の全額を支払う必要があります。支払いを確認できる振込通知書や、出勤簿、賃金台帳なども申請資料に含まれます。最新の内容は厚生労働省の公式ページと管轄の労働局で確認してください。
ilandoのDX研修で確認できる講座と資料
ilando(合同会社ilando)は、企業向け研修の企画・実施をオンライン・対面で行います。カリキュラム資料の提供と見積りにも対応します。
講座内容の確認先は、新規事業開発講座(事業計画・MVP検証・DX化計画)、データ活用分野、AI・業務自動化分野です。助成の可否は、計画届の内容に基づき管轄の都道府県労働局が判断します。
助成金の申請書類の作成・提出の代行は、社会保険労務士の業務のため、ilandoでは行いません。申請は事業主が行うか、社会保険労務士に依頼します。
よくある質問
DX研修なら、どの講座でも助成金の対象ですか。
いいえ。事業展開等リスキリング支援コースのDX化・GX化訓練では、時間数や実施方法に加え、特定の職務に必要な専門的知識・技能を学ぶ内容かを確認します。共通の概念理解だけでは対象になりません。
全社員が生成AIのプロンプトを学ぶ研修は対象ですか。
事業展開等リスキリング支援コースの改正資料では、汎用的なプロンプトの作り方を学ぶ訓練は対象外です。営業担当者が商品提案書の構成案作成・文章生成・修正を学ぶ訓練は対象例です。受講者の職務と実際の訓練内容を確認します。
同じ研修でも受講する職種によって扱いは変わりますか。
はい。事業展開等リスキリング支援コースの改正資料では、CO2排出量の計算手順を学ぶ訓練は、算定業務の担当者なら対象例です。人事や営業の従事者を対象とする場合は対象外例とされています。
改正後に計画届を出した研修には、必ず新しい基準が適用されますか。
事業展開等リスキリング支援コースには経過措置があります。契約・申込などの時期や訓練の区分によって、従前の支給要領が適用される場合があります。最新の支給要領と管轄の労働局で確認してください。
高度デジタル人材訓練と通常のDX研修は同じですか。
同じではありません。人への投資促進コースの高度デジタル人材訓練/成長分野等人材訓練は、スキル標準のレベル3・4となる訓練等や、大学・大学院での訓練が対象として示されています。企業内のDX化に必要な業務を学ぶ訓練とは、コースや訓練メニューの要件を分けて確認します。
出典
- 厚生労働省「人材開発支援助成金」
- 厚生労働省「令和8年度版 事業展開等リスキリング支援コースのご案内(令和8年4月8日版)」
- 厚生労働省「人材開発支援助成金(事業展開等リスキリング支援コース)改正 令和8年8月3日からの変更点について」
- 厚生労働省「令和8年度版 人への投資促進コースのご案内(令和8年4月8日版)」
- 厚生労働省「人材開発支援助成金 事業展開等リスキリング支援コース 支給要領(令和8年8月3日適用)」1401・1402
- 社会保険労務士法(e-Gov法令検索。第2条・第27条)